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今月のおすすめ担当  リズケン研究生・岡本 俊文
「BUTCH MILES Salutes CHICK WEBB」 The Butch Miles Sextet

 どもども。このコーナー初登場、研究生の岡本です。
 オススメアルバムを「1枚だけ」挙げるというのはすご〜く難しいですよね。あれもイイしこれもイイし・・・10枚挙げるより難しいかも。なんだかその1枚のイメージだけで「この人ってそういう人なんだぁ」なんて、自分の印象まで判断されてしまうんじゃないかと、余計気遣いなんかもしてみたり。
 今回は、そんな勝手な気苦労も多少抱えつつ(?)マイナーでゴキゲンな一品をご紹介致します。

 ところでみなさん、「JAZZは難しい」なんて思っていませんか?確かにいざ演るとなれば、いろんな意味で難しい部分があるのは否めないんですが、単に”聴いて楽しむ”上でも「難しくて解りづらい」という話はよく聞かれますね。勿論、一部には聴くだけでも難解なものもあるかもしれませんが、そもそもJAZZっていうのは、大衆が楽しめる音楽だったはずなんですよね。
 JAZZ=難解、そんな誤解を抱えている貴方に特にオススメしたいのがこのアルバムです。

 チェック・ウェブというドラマーはみなさんご存じでしょうか?1920〜30年代に活躍した伝説のドラマー、兼バンドリーダーです。
ご存じの方は、木魚の並んだトラップを前にして愛嬌のあるスマイルで写っている有名な写真を思い出すでしょう。そう、このお方です。
 
背骨が変形する持病で、身体的なハンディキャップがあったにも関わらず、類い希な技術とセンスを持っており、自分のバンドを率いて、かのベニー・グッドマン楽団とバンド対決(どれだけスウィングするか対決?)をして、圧勝だったという逸話も残っているほど。つまり、あのジーン・クルーパも舌を巻いたわけです!

 その伝説のチック・ウェブへの追悼という形で、これまた素晴らしいドラマー、私個人的にも大好きなブッチ・マイルズの率いるsextetが、ゴキゲンなスウィングを聴かせてくれるのが、このアルバムです。

 ブッチ・マイルズというドラマーは、ビッグバンドJAZZがお好きな方であればすぐにピンとくると思いますが、カウント・ベイシー楽団のレギュラードラマーだったことで有名ですね。近年また、同バンドに戻って演奏していると思いますが。

 さてこのアルバム、何がそんなにイイかと申しますと、とにかく聴いていて楽しい!これに尽きます。無条件にHappyになれます。

 アマチュアミュージシャンや一般リスナー達を、JAZZから遠ざける悪役を担ってしまっている現実問題。つまり、「JAZZ=難解」という聴く側の誤解、更に不必要に「小難しくする快感」みたいな演る側の勘違い、更に更に「小難しいのがJAZZだ」みたいな巷の歪んだJAZZ解釈。(ちょっと大袈裟ですが、多少なりともありますよね?)
 このようなことを笑い飛ばすかのような、純粋に聴いていて楽しくなるJAZZアルバムです。

 また、ブッチのプレーが”歌ってる”こと。
 ドラムが歌ってるし、バンドを歌わせてる。レガートも素晴らしいんですが、ちょっとしたコール&レスポンスやソロが、すご〜く歌ってるんですよ。決してびっくりフレーズのツギハギなんかじゃない。きっと本人は、ほんとにただ”歌ってる”だけなんでしょうね。

 プレーヤーの立場から言わせて頂くと、誰かのフレーズをコピーして練習するのもいいんですが、やっぱり自分自身のメロディを常に創り出しながら演奏したいですよね?つまりドラムで”歌う”ということ。

 そういう意味で、ドラマーの皆さんにとっては、「ドラム会話」のテキストとして、一度聴いてみる価値があると思います。これをテキストに、ドラムで歌うことや、他の楽器とどう会話するかなどを考えてみたら、今までとは違う角度から音楽というもの、ドラムというものが見えてくるかもしれませんよ〜!


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