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今月のおすすめ担当  リズケン研究生・高取 岳史
「Crossing the Bridge 」Eileen Ivers

 早いもので、今年も最後の月を迎えました。
 北風がだんだんと厳しくなってきて、道行く人たちの歩くスピードも心なしか早く感じます。冬がいよいよやってきた、という感じですが、みなさんいかがお過ごしでしょうか?

 僕がこのおすすめ倶楽部を書くのはこれで3回目となります。前回、前々回と、どちらもドラマーがスティーヴ・ガットの演奏しているCDをおすすめしました。

 前回の話の中でも書きましたが、僕は数多くいるドラマーの中でもこのスティーヴ・ガットが特に大好きです。「またかよ?」と思う方もいるかもしれませんが、今回もスティーヴ・ガットの演奏している、ちょっと変わったジャンルのCDをおすすめしたいと思います。

と、その前に・・・・みなさんはアイリッシュ・ミュージック、というのをご存知でしょうか?日本でもエンヤとかU2、ザ・チーフテンズなどが有名で、特にエンヤの曲は最近でもテレビCMなどに使われているので、聞き覚えのある方も多いと思います。
 この時点で、あぁ、あんな感じの音楽かな、と何となく思い浮かんでもらえれば幸いです。

 僕がこのアイリッシュ・ミュージックと出会ったのは、「リバーダンス」という現代風にアレンジをしたアイリッシュ・ミュージック+タップダンスのショーでした。
 5年前に初日本公演をして、今年も日本で公演をしています。テレビでもCMが流れていたので、知っている人も多いと思います。
 僕はこのリバーダンスに大感激して色々なアイリッシュ・ミュージックを聴くようになりました。CDやビデオも発売されているのでこちらもチェックしてみてもらえれば、と思います。

 さて、前置きが長くなりましたが、今回紹介するCDは、このリバーダンスでフィドル(バイオリン)を演奏していたアイリーン・アイヴァースのクロッシング・ザ・ブリッジです。

 何故、フィドラーのCDを?と思うかもしれませんが、ここで楽器にとらわれずに、素直にこのCDを聴いてみて欲しいと思ます。聴いてもらえれば、すぐにこのCDの良さがわかると思います。

 最初に、このアイリーン・アイヴァースという奏者について少し触れたいと思います。

 アイリーン・アイヴァースは1965年にニューヨークでアイルランド人の両親の元に生まれ、アイスランドからの移民の多いNYで育ち、さらに父親が航空会社に勤務をしていた関係で、アイルランド本国の文化にも強く影響を受けながら育ちました。
 8歳からフィドルを弾き初めて、アイルランドの伝統音楽の学校に通い、驚異的なその才能で数々の賞と30個以上(!)メダルを獲得した、という実績を持ってます。
 ちなみに彼女のフィドルの色は青色で、演奏も白熱してくるとワウ・ペダルを使ってギターのような音を出したりする、とても個性的なミュージシャンです。

 このCDはそんな彼女の3枚目のアルバムで、アイリッシュ・ミュージックをかなり現代風にアレンジしており、さらにアイリッシュの形は残しつつも実にさまざまなジャンルに進化している、とても面白いCDです。
 ロックやバラードがあり、フラメンコ、ラテン、さらにはR&B調の曲まであります。
 でも、どの曲もアイリッシュ独特の、メロディを何度も繰り返し、その中で徐々に変化していく様子は残っています。トラディショナルな曲をこんな風にアレンジしてしまうセンスや才能は本当に素晴らしいのですが、今回の参加メンバー達がさらにこの楽曲たちを盛り上げてます。

《主な参加メンバー》
*スティーヴ・ガット/ドラムス
*バキシ・クマロ/ベース
*アル・ディメオラ/ギター
*アレックス・アクーニャ/パーカッション
*ランディ・ブレッカー/トランペット
*ルー・ソロフ/トランペット
*マリア・パジェス/フラメンコ・ダンサー

・・・そうです!このCDの中で、スティーヴ・ガットが3曲、演奏に参加しています!(あ〜、やっと話がつながった)。
 どの曲もスティーヴ・ガットならではのグルーヴと曲の展開があり、ダイナミクスや歌い方など、さすがだなぁ、と思わず口から漏れてしまいます。スティーヴ・ガットが好きな方は是非、聴いてみて欲しい1枚です。

 またこのCDはパーカッションも沢山出てくるので、パーカッショニストの方にもおすすめです。

 バイオリンがこれだけたっぷり入った演奏は、あまり聴く機会がないのでは、と思います。ちょっと変わった、おしゃれな音楽を楽しんでもらえれば、と思い今回はこのCDをおすすめします。


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