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(テキスト:西尾健二)

ためになるかどうかはあなた次第!?
「ドラマーのための雑学講座」

 1月末にアメリカで開催されたNAMMショーの情報があちらこちらから集まってきています。今年はドラムメーカーの出展が多く、人によっては史上最高に多かったのではと言う意見も聞かれます。
 そんな中でもパールブースはかなり規模が大きく、今年のセールスに賭ける意気込みがひしひしと感じられたそうです。パールは久々となる高級ハードウェアの全面モデルチェンジが行われ(おそらく市場投入は4から5月ぐらいではないかと予想)、大胆な機構を組み込んだこれらの商品は期待大です。


 その他、グレッチのクロームド・ブラスシェル スネアの復刻や、ジルジャン、セイビアンなどシンバルの新製品、70年代を意識したドラムセットなど、ホットな話題がいっぱいのようです。

 ここ数年は、各社ともに商品のロープライス化を中心に開発が進められてきた感がありますが、良いものをしっかり作れば価格が高くなるのはあたりまえで、この辺のことを見つめなおした商品開発が進められていることを強く望みます。
と言うわけで、今回のテーマは

「楽器のクォリティと価格の相関関係」


第1章 安くて良いものはありえるのか?

 最近のデフレ市場の影響でメーカー各社が発表する新製品の定価設定がどんどん安くなってきています。
機能アップ、そして価格が安く何ていうことは本当に成り立つ物なんでしょうか?
新しい機能が追加されたり、デザインが変わったりしたのに価格が安くなると言うことは何か理由があるはずです。考えられることいくつかあります。

・生産の効率化による製造コストの削減
・輸送コストの軽減
・材料の仕入原価の削減
・材料や部品の質を落とす.......etc.

 企業努力による製造コスト削減により価格が下がっていくのであればこんなにいいことはありません。
 まさに良いものをより手軽な価格でと言う言葉がピッタリですね。問題なのは「材料の質の低下」です。
 カタログ上素晴らしい機能満載、しかも使い勝手も向上していそうなのに低価格を実現している物、しかも大幅に。

 これはクォリティの低下を疑ってまず間違いないでしょう。
 本当にいいものがめちゃ安なんていうことは、本来ならありえないのではないでしょうか。

第2章 安物買いの銭失いにならないために

 楽器を買うときは誰でも「いいものを出来るだけ安く手に入れたい」と思うものです。これは消費者心理としては当然のことです。
 しかし、いくら安いからと言ってその商品に飛びつくことは考えものです。なぜかというと、

「安い物にはわけがある」

からです。
 店頭で値段が安くなっている物には以下のような理由があります(お店によって若干違いはあると思いますが...)

・お店がセールなどを企画し、とにかく安くなっている
・店頭品や在庫品でなかなか売れず店的にやばい物
・お店で大量に仕入れてしまい、処理に困っている物
・展示していて傷、汚れがついてしまったもの
・メーカーが大量に作りすぎてしまい処分したがっている物
・廃番になってしまったもの、なってしまうもの
・メーカーとお店の交渉により、安い価格設定が出来る物.....etc.


色々な理由がありますね。
 ここで共通することは「メーカーなり、お店なりが無理をしてでも売りたい、売らなければならない物である」ということ。
 理由の最初にある「ただただ安い」場合は、欲しい物が安く買えると言う意味では最も利用価値は高いですね。

 しかし、その他の理由を見るとそこには「売れない、売りづらい」から安くすると言った構図が見えてきます。

 安くなっている物ほどしっかりサウンドチェックをし、楽器の状態を確認することが必要です。
 音が気に入れば問題ありませんが値段だけで決めてしまうのはやめましょう!
(楽器のクォリティ云々とはあまり関係ありませんが、重要です!)


第3章 楽器の価格

 楽器には高い物から安い物まで色々な物があります。一般的に安い物は初心者向き、高い物は上級者向きなどと言ったくくりで認識されている方も多いでしょう。
 では、その価格の差はいったいどうして起こるのでしょうか?その利用は以下のようなことが考えられます。


・素材の価格:安い材料を使っていれば価格は当然安くなります。

・製造工程の簡略化:同じ素材を使っていても製造工程を単純化することで製造コストを押さえれば値段は安くなります。ライン生産をすることで作業効率をアップすることもコストの削減につながります。

・輸送コスト:輸入品の値段が高い大きな理由の一つです。製造された物が販売店に並び、ユーザーの手元に渡るまでにかかる輸送コストは当然価格に反映されます。

・仕様の単純化:楽器の構造をシンプルにすれば、使用するパーツの数が減り価格は押さえられます。

以上のことからわかるように、価格が安い物は安物であると言う一般論はまったくの誤解であることがわかります。
 製造にかかわる色々なコストが価格に反映されているだけなんです。安い素材を使っていてもその他の理由により高い値段になっていることもあるでしょう。

 しかし、最初に書きましたが一見豪華に見える仕様でも価格が安いというのは何か落とし穴があるに違いありません。
 いいものをまじめにしっかり作れば価格設定は高くなるのが当然です。カタログスペックに踊らされず、いいものをしっかり見分けられる目をもつことも大切です。



まとめ

以前、とある有名ドラマーがこんなことを言っています。

「値切ったら、値切っただけの音しかしない!」

 まあ極論ですが、良いものとめぐり合ったら、どうしても欲しいと思う物と出会ったらがんばって手に入れる努力は必要かもしれません。
そして、究極のアドバイス。

「楽器店の店員はいきなり値引きの話をするやつは嫌い」です。

 最初に予算はこのぐらいで、こんな感じの音が欲しいのですが?といった質問ならいいのですが、
最初から「この店は何割引くの!」などと言ってくる人からは楽器に対する「愛」が感じられません。
 わらわらは、まじめに楽器のことを考え、まじめに楽器を選ぶ姿勢が見える人にはおのずと親切になります。

 商品にはそれに見合う正当な価格が設定されています。いいものを手に入れようとすれば、それなりに費用がかかると言うことを理解してください。


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