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「ちょっとアカデミックに行ってみよう! ドラマーのための "なんとなく" 物理学講座」


 ボカーン愛読者の皆様 こんにちは !

 昨年は,編集部のイジメとも思える厳しい質問に四苦八苦させられながらも何とか皆様のお役に立てるコラムを連載する事が出来たと思います(?)。
 2002年はさらに突っ込んだ楽器に関する役立つ情報を書き連ねていきたいと思います。


 さて、楽器の奏でるサウンドは様々な要素が色々な形で複雑に絡み合い、混ざり合い、溶け合って出来上がります。あなた自身も自分にはどんな楽器が合っているのか、どんなサウンドが好きなのか迷うところだと思います。
 しかし、複雑に絡んだサウンドを作っている要素を一つずつ解きほぐしていく事で、なんとなくそれらが見えてくる来るのです。これから、何回かに別けて(何回続けられるかは解りませんが)音を形作る様々な要素、要因と、それらの関連性についてみなさんと考えていきたいと思います。

 但し、私自身正式に物理学や音響物理学、音響工学などを学んだわけではなく、経験と勘に頼ったところがたぶんに含まれています。そんなわけで、もし間違った事を言ったとしても「こいつバカだなー。」と笑って正しい事を御教授してやって下さい。

とにかく、皆さんと一緒に楽器について楽しく学んでいけたらと思っていますので、今年もよろしく!!!

 

第 1 章 音のしくみ(性質)

§1 音の正体

 皆さんは楽器サウンドを含め「音」というものはどのようなものだと認識していますか?
 楽典や物理の授業をしっかり受けていた人は解ると思いますが(当然みんな知ってるか)、簡単に言うと物体の振動と、その振動の伝播によって生まれ、伝わります。ドラムの音も例外ではなく、叩いたヘッドの振動、それにより共振したシェルの振動、その他色々な振動が空気を伝わって耳に飛び込んできます。

図1を見て下さい。

 これは単一振動のもっとも単純な音の波形を示しています。正弦波とかサインカーブなどと呼ばれ、音叉や時報の音がこれにあたります。この図の中で示されている「振動」は音の高さ、「振幅」は音の大きさに関係するキーワードになります。
 良く周波数という言葉を耳にすると思いますがこの周波数というのは振動数とも言い、図に示した波形、1サイクルが一定時間(1秒間)に何回繰り返されたかをあらわします。周波数が大きければ音程は高くなり、小さければ音程は低くなります。また、振幅は振動エネルギーの大きさをあらわしそのままボリュームに直結します。
図1
実際の楽器サウンドには複雑な倍音なども存在するため、こんなに単純なものはありえませんが、概念だけ理解していただければ良いでしょう。今後話題に出る予定の素材と音の関係でも重要なキーワードになります。


§2 音の一生
図2を見て下さい。これはシンセサイザー理論の基礎中の基礎である、楽器音の立ち上がりから、消滅までをロジカルに示したものです。確かエンベロープカーブといったはずです。
このなかに示されたA,D,S,Rという4つのキーワードの説明は以下のようになります。
A=アタック タイム:楽器が発音し、ボリュームがピークになるまでの時間
この時間が短いほどレスポンスが早い楽器という事になります。
図2
D=ディケイ タイム:楽器の音がピークから安定するまでの時間

発音直後の暴れたサウンドが落ち着くまでの時間という言い方も出来るのでこの時間が短ければ「まとまりのある落ち着いたサウンド」になります。

S=サスティン:鍵盤を押し続けた状態

打楽器においては存在し得ない要素です。良くドラムやシンバルサウンドの減衰時間を指して「サスティンが長いとか短い」という表現をしますが、本来の意味で言うとちょっと違っています。

R=リリース タイム:鍵盤を離し、音が減衰するまでの時間となっています。

前述のドラムにおけるサスティンというのは実際はこの部分を指します。
 打楽器におけるエンベロープカーブは図3のようになりますね。

 スティックや手が打面に接触し、音が立ち上がり一気にボリュームのピークへ達し、そこからその楽器に持つ特性にしたがって減衰していく。
 一言で表現するとこんな感じですね。
 先ほどもちょっとだけ触れましたが、一つの楽器からは基音とそれに付随するたくさんの倍音で構成され、その1つ1つの音にこのエンベロープが存在します。
 単純に考えると、高音域の倍音エンベロープが長く伸びれば、高域の伸びが良い楽器という事になり、低域が長く伸びれば、低域が充実した楽器であるといわれます。
図3
 でも実際はそう単純には行きませんけどね。あくまで理論ですから.....。


§3 音(振動)の伝播

 音の性質の最後は、音の伝わり方(伝播)です。
 §1の冒頭でも軽く触れたように、音はその音源の振動が、素材、空気を振動させる事で持続、伝播していきます。ドラムに関して言えば、打面(ヘッド)の振動がシェル、シェル内部の空気、ボトムヘッド、パーツ類、ドラム周辺の空気などに伝わり我々の耳まで到達し音として認識されるわけです。
 したがって、楽器が発音し耳に到達する間に介在するあらゆる要素が、楽器サウンドに影響を与えるといって良いでしょう。

 楽器は、非常にたくさんのパーツが組み合わさって出来ており、振動しやすいもの、振動が持続しやすいもの、振動を押さえるもの、振動を吸収するもの等、色々な要素の組み合わせによって成り立つ事になるわけです。
 したがって、振動の通り道にあたる素材や環境を正しく把握する事で、その楽器がどんな音を発し、どんな広がり方をするのかが見えてきます。結果、色々な種類のヘッド、シェル材、フープ、その他パーツが存在する事になるわけです。

 振動が素材や空気中をどのようなかたちで伝わっていくのかは詳しい説明は省きますが(と言うか、上手く説明できるほどの知識は持ち合わせていません)、振動の伝播=音の伝わりであるという事だけはおぼえておいて下さい。
まとめ

 今回のコラムは「振動」という直接楽器とは関係ない事柄を中心に色々と書き連ねられていたので、あまり面白くなかったかもしれません。
 しかし、今後話が進むうちに役立つ情報が凝縮されていますので、そのうち「読んでおいて良かった」と、思う日が来る事でしょう。
 実際はもっと複雑な振動が重なり合って一つの音を形作っているのですが、基本的な概念はお解りいただけたのではないかと思います。

次回は、この振動と素材の関係について考えてみたいと思います。

では、また来月!

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