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・楽器オモテ・ウラ話し_バックナンバー
今回の質問

「教則ビデオ(本)とは」
西尾さんによるお答え

 最近は、ドラムや音楽に関する雑誌やビデオなど楽器や演奏に関する情報媒体がたくさんあり、簡単に知りたい情報を手に入れることが出来るようになりました。(ある意味このボカーンもそんな情報媒体のひとつですね)。本当に便利な世の中になったものです。
 そんな中で、演奏技術を身につけるためにもっとも役立っているのが「教則ビデオ&本」ではないでしょうか。

 教則ビデオ(本)を文字どおりの意味で解釈するのであれば、楽器の演奏技術等を基礎から学べるようにまとめられたビデオ(本)の事になります。

 そもそも【教則】の意味は、「物事を教える上での手順や規則。(新辞林 三省堂)」という事らしいのだが、はたして楽器を学ぶのに規則などというものが必要なんだろうか。もちろん順序立てて系統的に学んでいく事が効率的な勉強の仕方である事は間違いないのだが........。

 今回は、このあたりの常々私自身が疑問に感じている事を踏まえつつ、教則ビデオ(本)について考えてみたいと思います。



●教則ビデオ 〜 以前 〜


 我々世代のドラマー(以外のパートも同様)が楽器を学び始めた頃には、教則ビデオなるものは存在していませんでした(有ったかもしれませんが、地方の楽器店にはそんな物が置いてあるわけも無く....。)。

 教則本なども今のようにテーマ別に親切に解説されたものなどあるわけなく、ヘッドホンで必死になってレコードやカセットテープ(CDやMDなども当然ありません)を繰り返し聞き、コピーをしたものです。今思うと「なんて効率の悪い事を...。」という感じですが、これはこれで良い事もたくさん有りました。
 何をどうやっているのか判らないので、適当に想像しフレーズや手順を考えて演奏する、言いかえれば自分で考える力を自然に身に付ける事が出来たのです。


●教則ビデオの登場

 正確なところはわかりませんが、教則ビデオの登場は、多分1982年ぐらいだったと思います。レニーホワイト、ヨギホートンらのビデオがDCIから発売され(当時は恐ろしく値段が高かった。一本\10,000以上していたらしい)物凄い勢いで売れまくったそうです。
 それまでレコードを聞くか、生でライブを見るという数少ないチャンスでしか触れる事が出来なかったスーパードラマーの演奏が自分の好きな時に好きな部分だけ見る事が出来るのですから当たり前の話かも知れません。

 今では、数え切れないほどのドラマーのビデオが世に送り出され(中には「こんな人のビデオまで.....?」というものもありますが)自分の好きなプレイヤーが自宅で演奏してくれるということが当然のようになってしまいました。
 初期のビデオは、ドラマーが行なったクリニックの模様を収録したものや、インタビューに答えつつ演奏をするといった形態が多かったのですが、最近では作りも凝ったものが増え、鑑賞用としても非常に面白くなってきました(イヤー、ほんと、良い世の中になりましたねー)。


●皆さんはどう使っていますか? 〜教則ビデオ&教則本との付き合い方〜

 ところで、皆さんはこのビデオや、教則本をどのように使っていますか。まさか×××のねたに使っている人はいないと思いますが、使い方を一歩誤るととても危険な存在になってしまいます。

 登場するアーティストの考え方やコンセプトなどを本人の言葉で聞く事が出来るし、どのような体の使い方をしているのか、セッティングはどうなのか、手順はどうやっているのかなど、数え上げればきりがないほどの情報量が詰め込まれているという点では、本当に素晴らしいアイテムだと思います。

 しかし、そこで提示されている事は決してあなたにとっての答えでは有りません。音楽というものは「生き物」であり、その映像、音が収録された場所の空気や他のアーティストとの間に起こる「ケミストリー」で成り立っているものです。もちろん曲やプレイに対するコンセプトはありますが(とても重要です)、そこに収められた演奏はその場限りのもののはずです。

 ビデオを見て、そこに提示されたものをそっくりマスターしたからといってそこで満足しても何の意味も有りません。
そうです、コピーをコピーで終わらせてしまっては あなた自身のオリジナリティは生まれてこないのです。
 ビデオという媒体は、そこに「これが答えだ」的な要素がドンずばりの形で提示されてしまうため、それを見た人に対して安心感を与え、想像力を奪ってしまう危険性をはらんでいます。

 よく新しいビデオが出ると片っ端から買っている人がいますが、いったいどういう見方をしているのか心配になります(大きなお世話かもしれませんけど.....)。自分の目標とするスタイルを真剣に勉強、研究するつもりであれば、そんなに多くのビデオやテキストは必要ありません(というか、たくさん持っていても使いこなせません)。
 ビデオや教則本を手にするという事は、それを使って練習をするという目的があっての事だと思います。では、どのようにすれば有効に活用する事が出来るのでしょう。


● ビデオ & 教則本の活用方法


 以下に、上手なビデオ、教則本の使用例を思い付くままに書いてみました。
 ( あくまでも私の意見でしかありません。あしからず! )


1、フィジカル面でのお手本

 打楽器を演奏するという行為には、少なからずフィジカルな側面を持ちあわせています。一流と呼ばれるプレイヤーの動作は非常に無駄のない力の抜けた動きをしています。効率の良いからだの使い方を盗むために音を聞かず、じっくりと動きを見てみましょう。

2、プレイヤーのコンセプトをしっかり把握し、アイデアを盗む


 プレイに出てきたフレーズをそのままコピーするのではなく、コンセプト自体をコピーし独自のアイデアに昇華させる。オリジナリティを確立するには自分で考えて苦労しないとだめです。

3、ビデオや本の内容を疑ってかかる

 ビデオ(本)のなかで解説されている内容は、あくまでそのアーティスト(著者)の考え方であるので、本当にそれが良いのか、果たして自分にあっているのかどうかを自分なりに考える。(自分のプレイについて見詰め直すきっかけになります。)

4、教則本もビデオと同様、そこに書かれている事だけをやっても面白くない

 自分のアイデアで応用する事を考えましょう。ひとつのフレーズも見方を変えたり、考え方を変えるだけで無限の可能性が広がります。

他にも色々な活用方法があると思いますので、自分で考えてみましょう。


●今月の結論

 ビデオも本も教科書ではなく参考書です。
 バイブルとして頼るのではなく、自分のプレイを築くための手がかりとして活用しましょう。
(でも、ビデオは見ているだけでワクワクするものや、単純にミーハーな動機で見るのが良いですね。練習嫌いだし!!!!!)

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