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(テキスト:ヤマムラマキト)

“この人キテます! 〜ドラムバカ一代〜”

山木秀夫の巻

 う〜ん。今月はどうしよう...。なんだかんだ自分の中でホットな人は紹介してしまったし...。もちろん素晴らしいドラマーはたくさんいるんだけど、普通のドラマー紹介になってしまうのは路線が違うし...。来月は合宿もあるし、準備で忙しいということにして休載にするか...なんて言ったら編集長にどやされそうだし...(笑)。

 いろいろ考えたあげく、今回は玉手箱を開けることにしました。そう、私が日本のドラマーの中でいちばんくすぐられる人、山木秀夫さんを紹介したいと思います。なんとなく、ドメスティックなものを紹介するのは別な場所でと思っていたのと、自分の好み丸出しなのもなにかなと思っていたのですが、やはりこの人をおいて我がドラムバカ一代は無いかなと。

 山木秀夫氏に関しては、いろいろなところで紹介もされてますし、多ジャンルでの活動がありますが、私としては、とにかく生で聴くべきドラマーだと思っています。

 私がドラムを始めた頃、今は無き六本木ピットインでSONORのイベントがありました。青山純、山木秀夫、斉藤ノブの3人がソナーでの演奏を披露するというものでした。確か無料のイベントで、昼間にやったものだと記憶しています。金は無いが時間は有り余っていた私は、早めに並んで山木秀夫氏のセットのすぐ前に座りました。セットはステージ中央を向いてセッティングされていて、私は山木氏の左手側にいて、スネアやハイハットを叩く様子がよく見える位置でした。

 ただ、実はこの当時私は山木氏も青山氏も聞いたことがあるけど、別に興味もない、そんな感じでした。つうか、ドラムにもまだそれほど入り込んでもいなかったように思います。で、ほどなく3人がステージにあがって、なにやら叩き始めました。10インチのタムを叩くのに大げさなほどに腕を振り上げて叩く青山氏を見て「なんか演出っぽい」なんて(笑)素人丸出しな感想を抱いたりしながら、目の前にいるこの人(山木氏)はシンバルをチンチロやってるばかりで、いつになったらドカンドカン叩くんだろう、なんて思ってました。

 こんな風に打楽器だけで演奏しているのを見たのは初めてだったのもあり「すごいなぁ、音がしっかり揃って聞こえる」とビックリしたのを憶えてます。ま、考えてみれば当たり前ですねぇ、今や大御所のこの3人の演奏ですから。で、そうこうしているうちに、なにやら気配を感じた次の瞬間、部屋中に「パーン」とはじけたような音がして、その後キラキラと音の粒が降り注いできました。「なんだ今のは!?これはハンドクラップというやつか!」なんて思ったら、どうやら目の前の人(山木氏)がスネアを叩くとこの音が出ているんですね。

 いや〜びっくりしました。今思うと、すごく深めにリバーヴをかけていたのかもしれませんが、その電光石火のごとき発音のすさまじさに、度肝を抜かれました。演奏が終わった後に、お客さんがセットの周りに集まっていろいろ見ていたので、私もそのスネアを見てみました。スナッピーが少し緩めに張ってあって、それ以外はそれほど特徴は感じませんでした。もちろんトリガーなどあるわけもなく(笑)

 そんな原体験が私の山木秀夫体験の始まりでした。その後、これまた今は無き芝浦インクスティックに小林武史氏のレコ発ライブ(古いですなぁ)を見に行ったり、KEEPや近藤等則IMAを見に行ったり、ジャズからアイドルまで、山木氏の叩いているものを聴いたりしましたが、とにかく音が出るときの緊張感というか覚悟というか、そういうものがもの凄いんですね。ある種「精神性」が飛び抜けていて、ドラムを聴いているんだけど、ダイレクトに波動やイデオロギーを感じているというか...。以前熊本に行ったときに、阿蘇山を見て「この揺るぎなさはある意味山木秀夫だなぁ」と惚れ惚れしたのですが、山木氏のドラミングは圧倒的な重力感とか研ぎ澄まされたものを感じます。

 また、山木氏のドラム・クリニックが開かれたときに、会場の方から「早く叩くコツを教えてください」という質問が出ました。これに対して「コツってなんですか?ちょっと意味がわからないなぁ」と答えた山木氏。「ゆっくりから始めて、疲れたら休む、休んだらまた始める。そうしているうちに動くようになってきます。」これ、光ってますね。とにかく口や理屈じゃなくて音の説得力、音そのもの以外での理論武装をしない姿勢、そして自分で考えること、山木氏のドラムに向かう姿を見ていると、それを実践してきた男の姿だなぁと感じてしまうのです。

 私が進める山木秀夫氏の演奏は、彼の1枚目のソロ・アルバム「テンテレツク」ですね。シモンズとソナーのタムを混ぜてアフリカっぽいことをやってる曲とか好きです。あとは、佐藤準さんがアレンジをやっていた頃の今井美樹とかよかったりします。

 ケンスタにも時々リハーサルやサウンドチェックに来るギターの矢堀孝一氏は、最近頻繁に山木氏と演奏していますが「なによりも信頼感が違う」と言っていました。山木秀夫氏の演奏、みなさんも是非生で見てください。CDには入りきらない生の波動がビンビン伝わってきますよ!

   


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