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(テキスト:ヤマムラマキト)

“この人キテます! 〜ドラムバカ一代〜”

トーマス・ラングの巻

 先日、コマキ楽器の西尾さんと合田さんの取り計らいにより、トーマス・ラングにインタビューさせていただきました。去る6月6日、ソナー・ドラムのイベント「SONOR FORCE EXTREME 2004」ために来日したトーマスに会って話しをし、その後ステージもリハーサルから見ることができたのでした。

 インタビューっていうのは、なかなかに難しいものです。リズケンの石川さんなどは英語がペラペラな上に見た目も外人級、たくさんの外人ミュージシャンの友達がいて、インタビューもスラスラです。それに比べて私は英語など超適当、おまけに冴えない顔立ちで冴えないオーラを発し続けて40年、インタビューはいつも緊張するのでございます。

 トーマスについては、一般的にインタビューで聞かれるようなことはほとんど彼のホームページに書かれています。そのあたりに目を通しつつ、私は彼の「耳」について、そして「肉」について聞いてみようと思っておりました。インタビューは、結果的にはとてもスムーズで、おそらく私が今まで体験したもののなかで一番気兼ねなく進むことができました。トーマスは本当にフランクで、しかも的確に応えてくれました。

 まず「耳」について。トーマスは、シンバル・メーカーのマイネルからシグネイチャー・シンバルを出しています。先日別の仕事でフィルター・チャイナとかキネティック・クラッシュなどを試奏させてもらったのですが、なんというかあまり鳴らないシンバルで、ちょっと不思議な感覚なんです。そしてドラム・セットはソナー。彼のシェルはメイプルとバーチとヴィンテージ・メイプルを重ねたものらしいです。ああいうセットで、ああいうバランスの演奏をする人は、サウンドに対してどういう耳を持っているのか、それを聞いてみたかったんですね。

 次に「肉」。彼の教則DVDを見ていると、とにかく手足がよく動く動く。しかし、DVDでの話しなどを見ていると、いったい彼という人は、筋肉が先か、頭脳が先か、どっちなんだろうと。これに関しては、本人にそのまま聞いてみました。

 ここまで書いておいてなんですが、インタビューの詳細は「JPC会報」を読んでください(笑)ただ、上のふたつの質問についてだけ、総合すると「こんなことしてみたいと思ったからそれをやってみた」という、実に素朴なもののようでした。「こんな風に叩いてみたい」と思えば練習をし、「このドラムいい音だな」と思えばそれがどんなものであるかメーカーに問い合わせる。本人に言わせればすべては「脳」なんだということでした。手や足は「脳」が動けと言えば動くんだと。彼は、速く叩くための方法論や練習法は、自分はやらないんだと言っていました。彼に言わせれば、耳も手も足も、脳が使っている道具のようなものかもしれません。その道具を使いこなせるようになるまで、経験を繰り返しながら、ひたすら脳は命令を続けるということでしょうか。

 インタビューの後に行われたイベントでは、DVDで見たドラミングを、迫力100倍で叩いてました。本当に凄かった。演奏の後、奏法を解説しながら、ツインペダルを使ってヒールダウンでRRLLRRLLとダブル・ストロークをやるんですが、テンポ90以上はありました。すごい音圧。ヒールダウンですよみなさん!いや、あれはコツもなにもないです。

 結局、脳なのか筋肉なのかと思いながら「私が本当にできるようになりたいことはなにか」を考えてみたところ、結構矛盾があるんですよね。育って欲しいと思いながらも水やりが面倒くさい、みたいな(笑)こんなことだから脳からの命令がまとまらないのでしょうか。しかもこの原稿もまとまりがないって?皆さんもコツコツ練習に励みましょう!


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