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(テキスト:ヤマムラマキト)
 さて、今回のライドバカ一代は、目眩くシンバルの世界に誘ってくれる「ライドの達人」を紹介したいと思います。ボクにとってのライドの達人は何人かいるのですが、その中でも、ごく最近インタビューを通して実際の音に触れることができた「Jeff Ballard」について。


Makito & Jeff

 ここ最近この人の演奏はよく聴いていました。チックコリア&オリジンのドラマーとして知られ、まぁいわゆるジャズドラマーに分類されるであろうプレイスタイルですが、シンバルの音が実に気持ちいい。やわらかく、温かく、しかし粒立ちはよくて、冷たくはないけれど透明感もあって、そのサウンドに惚れてしまったのでした。\\

 最初「Past, Present & Future / The Chick Corea New Trio」でJeff Ballardの演奏を聴いたときには、実になんと美しいシンバル・サウンドだろうと聞き惚れるばかり。一体どんな楽器を使っているのかと、ドラムマガジンの記事を見てみると、彼の使用しているシンバルは所謂「Old K」でした。Old Kといえば、途方も無いヴィンテージ・コレクション道に踏み込むことになります(^^;)。こりゃぁ一筋縄ではいかないなと思いつつ、しかし一体彼のシンバルサウンドはどんな特徴があるのかと改めて聴けば聴くほど謎めいた気持になっていく始末。ピング音ははっきりして、響きはダークで深みがあり、クラッシュ・サウンドとライド・サウンドとカップ・サウンドのバランスが良く、ハイハット、クラッシュ、ライドという要素が巧妙に混じり合っている...。

 Jeffはまた、ボンボのような太鼓やベル、カシシ、シェイカーの類をドラムセットの横に置いて、ハンド・パーカッションのサウンドとドラムのサウンドを混ぜて演奏するのですが、その音量のバランスも実によいのですね。で、そうこうしているうちに、Jeffがジョシュア・レッドマンのバンドでブルー・ノートに来るというので、ドラムマガジンにお願いしてインタビューをさせてもらうことになりました。ワクワクしてその秘訣を探るべくいろいろと尋ね、そして目の前で実演してもらうと、そこには素晴らしいサウンドが、当然の如く広がっておりました。CDで聴いた音は、なにひとつ嘘偽りの無い、彼の生音そのものでした。

 Jeffの使っているシンバルはハイハットのボトムがパイステ・サウンドフォーミュラであることを除き、すべてOld Kでした。トルコで仕入れたもの、知り合いとトレードしたもの、コレクターから譲ってもらったものなどいろいろだそうです。チックコリアのトリオで来日したときに使っていたサイド・シンバルはご臨終になってしまったらしく、このジョシュア・バンドで来日した際にはまた違ったものを使っていました。

 ジョシュアでの演奏は何度か見ることができたのですが、ステージ正面最前列で見ていたときに、彼のシンバルから繰り出されるサウンドには、本当にウットリでした。Old Kというと、サウンドは気持ちよいけれど、サウンドが柔らかすぎてビートが出ないということをいう人も少なくないですが、シンバルからキラキラとしたダイヤモンドの粒が落ちてくるような印象で、バラードでも、アグレッシヴな演奏でも、素晴らしいサウンドでありました。皆さんも是非聴いてみてください。


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