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(テキスト:萱谷亮一)

 寒くなってきましたねー。
 僕は今2月5日〜日生劇場で行われるミュージカル「ユーリンタウン」の稽古の最中です。今回ミュージシャンは5人。オンステージで囚人服を着て演奏という、なかなか楽しいステージになりそうです。2月はずっと日生に通うので、定期券買わなきゃ・・・。

 さて、今回のテーマですが、季節がら「音大受験」を取り上げてみました。実は毎年この時期大変なんです。RIZKENに通う受験生もいよいよ本番直前。自分の経験も踏まえて、昨今の音大事情、受験内容などを紹介したいと思います。

 音楽大学は全国に割と沢山あり、東京だけでも10校近くあります。普通の大学と同じで各大学によって特徴があり、レベルも学費も倍率もまちまちです。音大ごとに毎年試験課題が発表され、受験生は皆その課題を練習して試験に臨みます。
 一応大学ですから、センター試験や一般教科、音楽の基礎とされるソルフェージュ(新曲視唱、
聴音、楽典など)、副科ピアノも課題に含まれます。

 音大は基本的に「クラシック音楽」を「勉強」するための機関です。プロミュージシャンを育てるわけではありません。ここが専門学校との大きな違いでしょうか。ところが近年ではジャズ科、ポピュラー科なども増え、唯一国立の音大だった東京芸大も近 特別学校法人になるなど、どんどん専門学校化されていく傾向にあるようです。

 いわゆる「打楽器科(打楽器専攻)」の入試課題も大学によって違いますが、手段としては小太鼓(スネア)、マリンバのいずれかを選択して受験する大学がほとんどで、10年ほど前からティンパニ受験も選択肢に入ってきました。
 実技試験は、大きく分けて「基礎」「課題曲」「応用」の3つの項目に分けられます。

 「基礎」というのは小太鼓の1つ打ち、2つ打ち、5つ打ち、ロール、マリンバのスケール、ティンパニのチューニング、ロールなどで、基本がしっかり出来ているかを判断します。簡単な課題を全員にやらせると楽器に対する適正がわかります。
 美術大では、一次試験で「豆腐」のスケッチがあるそうです。ここで半分以上の受験生が落ちるとされています。

 「課題曲」は学校によってレベルが異なります。わざと難しい課題を与えて差を付ける大学(落とすための受験)と、「この曲がある程度クリアできていれば合格」みたいな感じで簡単な課題を与える大学(合格させるための受験)とがあります。
 いずれにしてもピアノ科やヴァイオリン科などに比べると打楽器科の課題は非常に簡単だと言えるでしょう。
 スタンダードな例としては、


「The All-American Drummer 150Rudimental Solos」(by:Charley Wilcoxon)
「Modern School for Xylophone,Marimba,Vibraphone」(by:Morris Goldenberg)
「Modern School for Snare drum」(by:Morris Goldenberg)
「Portraits in Rhythm」(by:Anthony J.Cirone)

などが挙げられます。(RIZKENに資料あり)

 「応用」というのは初見試奏や自由曲などのことで、いわば一発逆転のチャンス課題。
 僕が受験した東京芸大では名物コーナーとして「任意の楽器を用いて音楽表現を試みる」という入試課題があります。これは「その辺にある好きな楽器でなんか面白いことやってみろ」ということ。テクニックとか練習してきたものではない、自分自身を判断されるとってもコワイ課題です。

 マリンバ受験では「自由曲」を課せられる場合が多いようです。基礎や課題曲では甲乙つけがたい状況でもこの応用課題でははっきりと点数に差が付くのです。

 受験に望む側としては「基礎、課題曲は出来て当たり前。自由曲、自由表現で差を付けるぞ!」というのが合格へのキーワードになるのではないでしょうか。

 打楽器科には平均して一大学につき約30人ほど受験しますが、合格率、合格人数も、もちろん大学によって違います。一学年少なくて1〜3人、多くて30人(全員)。
 あまりに少ないとアンサンブルが出来なかったり、多過ぎるとオケにのれなかった 楽器や部屋が無かったりするので、一学年の人数や楽器、練習室の数なども大学選びの重要な要素となります。

 実際入試に望むのは17〜20歳くらいの若者です。彼らは何故音大に行こうとするのか?
 残念ながら「将来プロになってタイコで飯を食ってやる!!」というよりは「普通の大学には行きたくないし、親は大学イケって言うし、まぁ打楽器好きだし勉強したいし」程度の人が圧倒的に多いようです。
 だってまだ若いからプロの打楽器奏者がどんなもんか知らんし・・。実際僕も受験のきっかけは「どっか大学に行かにゃ〜いけん」という大前提があったからでしたからね。

とまあこんな感じで、無事音大生になれるのが、関東一円だけでなんと一年で200人くらいいるそうです。ということは毎年200人が卒業してプロの打楽器奏者になるってこと?
 まぁそのうち違う仕事に就いたり留学したり田舎に帰ったりで半分になったとしても年間100人は打楽器奏者が輩出されるんですねぇ・・・。しかも年を重ねるごとに打楽器人口は増えていくのみ。今はまさに打楽器奏者があふれかえってるのに仕事は不況で減っているのが実状でーす。

 音大では2年なり4年なり6年なり(大学院まで行く)かけて「クラシック(主に近代〜現代)音楽」を「勉強」します。そこで培ったものを、駆使してプロの演奏家になる人、さらなる「勉強」のために留学する人、バイトしながら自分の音楽を追究する人、実家に帰る人、教育者になる人、「あの人卒業して何やってんだろ・・」って言われちゃう人etc・・・。

 高いお金を払って音大を卒業したからと言って、プロになれるわけではありません。また、プロになることが、成功したと言うわけでもありません。とにかく今年もまた新たに200人が音大打楽器科を卒業し、200人が音大打楽器科に入学するんです。

 まぁココまで読んだ人はおわかりのように、僕個人としては生半可な気持での音大受験は正直あまりオススメしません。と言いますか、受験なんて結局「その人(または周りの人)が納得するかどうか」ですから。
 大学に合格したと言う事実で両親や自分が納得するならまぁそれは意味のあることだし。音大に行かずにプロになってイイ音楽してる人なんてそりゃあもういくらでもいるし、音大卒業して何もしてない人もいくらでもいます。

 なので、今の僕の結論としては、
「音大なんか行っても行かなくてどっちでもイイ!!むしろ行かない方が良いカモよ。」
ってことです。

 そこで音大進学を考えてる若い諸君、甘い考えは辞めましょう。音楽はシュミでやるのが一番よ。もっと普通の大学入って、公務員になりなさい。で、土日にドラム叩けばいいじゃん。OKじゃん!

 これは僕が音大受験を志したときに師匠も含めて周りからさんざん言われた言葉です。 この言葉を受けて「そうだな」と思ったあなたは音大は行かない方が良いでしょう。「なんだとコノヤロー!!」と思ったあなたは受験しても良し。


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