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(テキスト:萱谷亮一)

11/19〜23まで、アメリカのKentucky International Convention Centerで行われた「PASIC2003」に参加して来ました。今回は予告通りそのレポートです。

「PASIC(Percussive Arts Society International Convention)」とは、アメリカの打楽器協会(PAS)が年に一度開催する、クラシック、ドラム、マーチング、ワールド、マレット、エレクトリックなどあらゆる打楽器のエキスパートによるレクチャーやコンサートに加え、各楽器メーカー、出版社の展示、販売などが楽しめるアメリカならではのイベントです。(www.pasic.org)

 毎年アメリカのどっかで行われているこのイベントに一度は行ってみたいもんだなぁ〜と思っていたら、チャンスはやってきました。

 今回の僕の目的は、世界的に活躍中のマリンバ奏者三村奈々恵さんのステージサポート。憧れのPASICに、しかもプレイヤーとしていけることになるなんて!これはもうこの機会にいろいろ買い物して帰ろう!と、ほとんど空のスーツケースの中にスキーバックを入れてケンタッキー州とかいう未知の場所へ向かいました。

 行きの飛行機では全く寝ることが出来ず足がむくんでツライ上に、隣の黒人が英語で話しかけてくるし、飲み物にコーヒーを頼んだのに2回ともコーラが来て「違うじゃねぇか!」って言うこともできず飲みたくないコーラを2本も飲んだり大変でしたが、なんとか会場に到着。

 ホテルにチェックインしてロビーにいたら、 ・・・あれ?ピーター・アースキンじゃねぇ? あっちにはデビット・ガリバルディが。わー、ヴィック・ファース! あの頭はスティーブ・スミス!! ビックネームがいっぱい!ちょっとミーハーになってしまいました。

 その日は前夜祭ということで、ルー・ハリソンやジョン・ケージなどアメリカの作品を中心に打楽器アンサンブルと舞踏のコラボレーションというテーマでコンサートが行われていました。前夜祭というのにすごいお客さんの数!日本とは規模が全然違います。

 僕達の出番は初日の夕方。これが大変でした。何が大変って、セッティング、サウンドチェック、リハーサルが出来るのは本番1時間前。いい状態で本番を迎えるには時間との勝負です。
 なのに頼んだはずの楽器が来ない! やっと来たかと思えば18インチのバスドラを頼んだのに22インチのノーミュートのバスドラが来て「コレシカナイ」(←英語)って。

 そうこうしてる間にお客さんが入り始めてる・・・PAもバランスをとる時間もチューニングする間もない。キャパ3000人の馬鹿デカイホールだというのに・・・。今までやった中で最悪のコンディションで本番を迎えました。

 せっかくココまで来たのに・・・。ステージ上の音はメチャクチャでしたが、幸い外音は良いバランスで、このトリオ編成(マリンバ、ギター、パーカッション)は向こうでも珍しかったらしく、最後はなぜかスタンディングで終了(アメリカでも珍しいらしい)。

 ステージの盛り上がりとはウラハラに煮え切らないまま会場を後にすると、全然知らないアメリカ人が何人か来て「スッゲーヨカッタヨ!!カンドーシタヨ!!」(←英語)と話しかけてくれて、まぁ救われました。


 2日目は、昨日のステージを見た人の紹介で、急遽地元の国営ラジオ局にトリオで出演。しかもお客さんのいる中での生演奏。
 昨日のうっぷんを晴らすかのようにノリノリで演奏したところまた大ウケで、昨日のまま終わらないで良かったと一安心。とにかく自分の出番は終わったので、後はコンサート&買い物三昧!!

 展示ブースではいろいろ変わった楽器やアイデア打楽器に巡り会いました。しかもみんな安い!日本ではまだ手に入り難いスティックや楽器を沢山ゲット。ドラム小僧が試奏、というか練習、というかドラムソロを頼んでもないのに披露してる点は世界共通だな〜とか思いながら広いブースを何周もしました。

 楽しかった! ジャック・ディジョネットが普通にセイビアンのブースで自分が考案した変なシンバルをずーっと宣伝してたのは笑ったけど。(彼は今回演奏する機会はなく、ただ宣伝しにわざわざ来たらしい。)

 クリニック&コンサートは同じ時間帯に違う場所でいくつも同時開催されているのでどれを見に行くか迷いました。すごくいいやつと、「???」のと、正直当たり外れが大きくて、これもアメリカだなぁ、と。

 印象的だったのは、変拍子をもろともしない超絶ハンドドラム軍団「Hands On'semble」、バケツやひょうたんを使ったり一台のマリンバを3人で弾いたり、凝ったオリジナルを披露した女性3人の「Caixa Trio」、マイニエリとアースキンのコンビでイベントのトリを務めた「Mike
Mainieri&American Diary」。

 なかでも一番凄かったのが、「Steve Smith」!!初めて生で見ましたが、うまい!うますぎる!多分相当練習してるんだろうなぁ。特に最後にやったジーン・クルーパーに捧げるハイハットだけのソロは圧巻でした。ビックリした!


 とまぁこの3日間はタイコ小僧としてはかなり楽しめました。結論としては、アメリカの打楽器レベルは「ピンキリ」ってとこですかねぇ。しかもみんな自分のために音楽やってる感じ。でもそこが面白い!
 いろんな人がいるからこそたまにとんでもないヤツが現れるんだろうな。「俺すげーだろ」と言わんばかりに展示されてるセットでドラムソロしてる若者とか展示ブースで自分の考えた「指スティック」とか「ネクタイギロ」みたいなのを必死にアピールするおっさんとか。

 まだココには書けませんが自分にとってかなりプラスになるお話も頂けたし、丁度21日は誕生日だったので、良い思い出になりました。大変だったけど行って良かったです。

 でも帰りの飛行機は辛かったなぁ。経由地で5時間以上待たされ、雪で経路が変わりアラスカの方まで行っちゃいました。夕方着くはずが夜10時に成田に到着。しばらくは時差ボケで変な感じでした。

1「イベント開始を待つ人々」

2「我らが三村奈々恵トリオ」

3「そうそうたる顔ぶれ」

4「展示ブースは大賑わい」

5「コレは便利?」

6「デカッ!」

7「Caixa Trio」

8「ネクタイギロと指スティック」

9「ケンタッキーの英雄と」

萱谷氏個人HPもあります。

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