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(テキスト:萱谷亮一)

 自分でもビックリなんですが、実はワタクシ4月1日に入籍しまして、新婚ホヤホヤなんです。その日はライブがあったんですが、エイプリルフールということで、メンバーにも結婚したことを内緒にしていて、本番のMCで驚かせる作戦を企んでいたのですが、これが大成功!! お客さんにも祝って頂けて、メンバーも喜んでくれてとても幸せな日になりました。・・しかし、打ち上げが明け方まで盛り上がり、新婚初夜は「魚民」で過ごしたのでした。

 ちなみに奥さんも打楽器奏者なので、我が家はマリンバ4台、コンガ6本、ジャンベ4台所有となりました。あとはそれらを置く場所さえあれば・・・。

 とまぁ、人生の節目を迎え、またこのコーナーも無事一年目を終え、新たに頑張る決意をしている次第でございます。そういう心境の変化もあったりしたので、今回は趣を変えて、日頃から考えている事を少し話してみようかと思います。

「マルチについて考えてみる」  

 僕は8歳からドラムを習い始めて、中学ではマーチング、高校では吹奏楽を経験し、ティンパニ受験で入った芸大ではクラシック系の打楽器を勉強すると共に、RIZKENでラテン・パーカッションや様々なリズムを学んで来ました。現在は「どんな現場でも対応出来るマルチ・パーカッショニスト」を目指していろんな所で日々音を出しているわけです。

 今でこそ「マルチ・パーカッショニスト」と言う目標があるのでなんとか頑張ってますけど、そこに辿り着く前の学生時代はずいぶんと悩んだものです。

 当時僕の周りには、オーケストラに目標を絞り頑張っている人、マリンバでソリストを目指してる人、ドラムを一日中叩いてる人など、数ある打楽器の中で、自分にあった物を選んで、それをひたすら追求してる人ばかり。諸先輩方には、何か一つ「コレだけは誰にも負けん」という楽器を早く見つけるべきだ、みたいなことを言われ続けていました。

 実際に活躍している人を見ても、やっぱり「コレ!」を持ってる人は強く、格好良く見えて「かなわないな〜」と思わせる何かを感じ、逆に、幅広くそれなりにやってる人は「筋が通ってない」というか、ちょっと弱いイメージがありました。

 さぁて自分はどうしよう?僕は一体どうしたいんだろう? 経歴をみてもらえばわかりますが、とりわけ何かが得意だったわけでもなく、全部中途半端に広く浅く勉強してきたツケがまわってきたのです。大学3年の頃だったかな。芸大の中ではドラムやラテンは叩ける方だし、RIZKENの中ではクラシックや鍵盤は出来る方だけど、その道のプロには所詮かなわないわけで。
 全部「ニセモノ」のような気がして、一つに絞ってやってる「ホンモノ」には一生勝てないんじゃないか・・。とか、器用貧乏で終わるんじゃないか・・。  かといって、いまさら「自分はドラム!」とか「一生オケでティンパニ!」とか「ジャズヴァイブだけで食っていく!!」なんて思わんし・・・。

 結論を急ぐほど焦り、しかもその気持と反比例して、ハンドドラムやデジタル系のパーカッションまで興味持っちゃったりして。そうこうしてる内に卒業ですよ。卒業演奏でも中途半端にジャズやって追試になるし。

 芸大卒ともなると、若い内は黙ってても仕事は来るものです。オーケストラやミュージカルのエキストラ、ちょっとしたレコーディング、セッション、音楽教室。いろいろ思い悩みながらも仕事を一生懸命こなしていくのですが、行く先々で、「お前何が得意なんだ?」「卒業してどういうことがやっていきたいの?」という質問される度に「あ・・いやぁ・・何でもやりたいんです・・けど・・。」の繰り返し。一番イヤだったのは、オケに行くと「自分は別にオケがそれほどやりたい訳じゃない」ドラムの仕事だと「普段ドラムだけやってるわけじゃないんで」という具合に、言い訳してる自分に気づいたときです。
 一頃はそのことばっかり考えて過ごしておりました。しかし、どーしてもなにか一つに絞ることはおろか、どれも削ることは出来なかったのです。で、考えて考えて考えた結果、結論が出ました。

「い〜やこのままで。」  

 っていうか何でもやっちゃえ!! 1人くらいコンガもドラムも鍵盤もティンパニもそれなりに叩くやつがいてもいいじゃん! もしかしたらそういう人が叩くドラムは普通のドラマーには出来ない事が出来るかも知れないし、ハンドパーカッションの感覚をティンパニに応用できれば面白い事ができるはず。世の中「様々なジャンルで活躍中」とか「ジャンルを越えて活動している」とかプロフィールに簡単に書いてる人がそりゃあ沢山いるけど、それの一番を目指そうではないか。そう思えるようになったら、肩の荷がスッと降りてくれて、どんな仕事でどんな楽器を扱っても後ろめたい感じは無くなり、「なんでも吸収してやるぞ」という気持になったのです。

 一つの楽器に一生を捧げて追求している人は、もう本当に尊敬します。でもそれが出来なかったからといって、別にどうってことはないかも知れません。要は自分に合ったスタイルで自分なりのプレイができればいいんです。そう言う意味でパーカッションは他のどの楽器よりも自由度が高く、その人のセンスが活かされる楽器ではないでしょうか。こんなコーナーを、ここまで読んでる人は多分少しは打楽器に興味があるのでしょう。もし昔の僕のように自ら難しい方へ結論を導こうとしている人がいたら、考え方を変えてみるのもいいんじゃないでしょうか。

 また、ドラマーになる!と心に決めた人も、ストイックにドラムばっかりやるよりは、コードの勉強をしたりとか、クラッシックのようなインテンポでは無い音楽も勉強すれば、さらに音楽の幅は広がるでしょうし、合わせシンバルで、シンバルを鳴らすコツをつかんでみても決して損はしないと思います。

 以上自分を例にした「マルチのすすめ」でしたが、いかがでしたか?頭ではわかっていてもなかなか知らないジャンルや楽器は取っ付きにくかったりしますが、きっとなにかのヒントになると思うので、まずは軽くやってみましょう。もしかしたらその楽器があなたの「コレ!」になるかも知れないし、ならなかったとしても別にどうってことないんですから。

 次回からはまた「ちょっと役に立つ」打楽器講座に戻りたいと思います。

 


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