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(テキスト:石川 武)

今月の偉人さん  トム・ブレックライン


Tom Brechtlein
(トム・ブレックライン)
トム参加アルバム
Robben Ford & The Blue Line
THE AUTHORIZED BOOTLEG
Robben Ford & The Blue Line
天丼
 トムの3回目は、ステージを離れた思い出話にしましょう。

 トムとは彼が来日するたびにほとんど一度ぐらいは会っているのですが、結構オフの日なんか色々な所へ出かけたりしたものです。浅草、上野動物園、銀座博品館、などなど。あまり音楽とは関係ないところへもよく出かけました。今回は浅草、上野ツアーでの出来事を紹介しましょう。


 その日は彼のオフ日で、一日東京観光をしようということになったのです。下町育ちの私が思いつく外人を案内する場所といえば、まずは浅草!早速車で浅草へ行きました。仲見世を色々と見物しながら歩いていると、トムが急に大笑いして僕を呼んだんです。
 トムのほうへ行ってみると、お土産やさんの店頭にぶら下がっている笑い袋(懐かしいでしょ、覚えていますよねぇ!布の袋に簡単なテープレコーダーみたいなのがはいっていて、ボタンを押すと「うぁっはっはっはっは・・・」って笑うやつ)を片手に袋の笑い声と一緒に大笑いしてるんです。

 「タケシ、これこそ俺のためにあるようなおもちゃだぜ。がっはっはっはっは」

 10メーター四方の人々がこっちを見ています。「よかったね、買ったら・・・・・」と僕。手に入れたあとも大喜びで笑っています。
 「でもこれ、アメリカのおもちゃじゃないかなあ」
 まあいいやってことで、おなかがすいたので何処かへ何か食べに行こうということになりました。

「浅草だからなぁ、天丼でも食べる?」
「てんぷら?いいねぇ」

ということで天丼やさんにいったんですが、人気店なため結構混んでいます。店員さんが「相席でいいですか?」と。トムに聞くと「Sure!」と一言。私たちは品のいい初老の夫婦らしき人たちと一緒になりました。
 天丼でいい?と聞くと「OK!」待っている間にその夫婦に聞かれました。
「アメリカの方ですか?」通訳するとトムはにこっと笑って「Yes Iユm from USA」と答えました。すると夫婦は「やさしそうな人ねぇ」

 そうこうしているうちに天丼がきました。
 トムが食べ始めると、見ていた奥様が「お箸も上手なのね」するとトム「Yes I practiced」とやさしく答えました。2人ともニコニコとトムが箸を使って食べるのを見ていました。

 しばらくするとトムがもじもじしながら僕に聞きました。

「ねえ、しょうゆかけてもいいかな?」

僕は慣れていたので「いいよ」と気軽のこたえたんですが、それを聞いたトムが、見た目からしてごま油で揚げた濃い口なてんどんに、しょうゆをなみなみとかけ始めたもんだから、前に座っていた夫婦は口をあけたまましゃべらなくなってしまいました。
 変な雰囲気に気づいたトムが

「健康に悪いよね・・わかってるんだ」

と夫婦に向かって苦笑いしながら言い訳していました。僕はいまだにあの夫婦のまるでコントの落ちのような顔が忘れられません。
今月の一言

I know what Im doing.「わかってるよ・・・!」

解釈 「ほんとかよ・・・・・」


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