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(テキスト:石川 武)

今月の偉人さん  フランク・コロン


Frank Colon

(フランク・コロン)

 特にブラジル系の楽器に精通しているパーカッショニスト。
 1951年ワシントン生まれ。11才よりピアノを始め、19才からパーカッションを始める。マンハッタン・トランスファー、ウェイン・ショーター、アイアート・モレイラ、タニア・マリア等のレコーディングに参加。また、ウェザー・リポートやパット・メセニーなどのツアーにも参加した。

フランク参加アルバム。
「Brasil」
The Manhattan Trnsfer
「JUNKANOO」
BARBARA DENNERLEIN

「いいよ!」
 今回の偉人さんはフランク・コロンというパーカッショニスト。

 日本ではあまり際立って有名ではありませんが、私の教則本を持っていらっしゃる方なら、ビリンバウの記事を書いてくれた人といえばわかるかな。
 彼に始めてあったのもかれこれ10年以上前かな・・・アイアート・モレイラ・バンドのパーカッショニストとして来日したときのことでした。始めてあったときの印象は、鋭い目のおっかない人。でも実際はとてもまじめなジェントルマンでした。
 お話は何度目かの来日のとき、フランクは「マンハッタン・トランスファー」のパーカッショニストとしての来日でした。コンサートも見せてもらったのですが、さすがはマントラ、招待客まで満席。到着が遅くなった私は舞台袖で見ることになったのです。
 この日は様々な意味で面白かったのですが、そのエピソードは次回お話することにしましょう。

 数日後、フランクがオフの日に一緒に食事でもしようよということになり、私はフランクの滞在しているホテルへ迎えに行きました。ロビーから部屋へ電話すると

「ごめん、まだちょっと出られないんだ。部屋まで上がってきてくれる?」
「いいよ、じゃあ今いくね」

と、部屋まで上がっていきました。ノックをすると中から別の人が出てきました。フランクは奥でなにやらごそごそとやっています。

「ハーイ(やっぱり向こうの人の挨拶は映画みたいだな)タケシ!ちょっとベットにでも座って待っててよ。ああ、彼はロビー(って言ったような気がするんだけど)、チック・コリアのエレクトリック・バンドにいたやつだよ」

 やっぱりね、どっかで見たことがあったんだ。

「ちょっと待っててね、ベッドサイドにペイストリーがあるからつまんでて!」
「ペイストリーってなに?」
「そこの、それ!」
「ああ、菓子パンの事ね・・・」

 向こうの人がおっしゃると皆高級に聞こえてしまう。いかんいかん、日本男児がんばらなきゃ!!

「タケシ、ちょっと手伝ってくれない!」というので
「なにやってんの?」と聞くと
「ボンゴのヘッドの張替え」

 そんなこと手つだわなきゃできんのか?フランク、ほんとにパーカッショニストか?・・・

「何を手伝うのさ、ボンゴヘッドはってんでしょ?」と聞くと

「ちょっと、リングにヘッドを巻くの手伝ってもらいたいんだ、ちょっとこのヘッド硬くてさあ」
「なんだフラットの皮はってんのか、どれどれ・・」

といって皮を見ると、なんとも分厚い皮を持っているんです。

「何かその皮厚くない?」と聞くと

「うん、コンガヘッドだよ」

「はあ?コンガヘッドーッ??ボンゴにはるの?」
「うん。俺これぐらいがちょうどいいんだよね、ワールドツアーだと普通のヘッド張ってると10枚ぐらい破いちゃうんだ。それにこれだと思いっきりプレイできるしね。」

「・・・・おみそれしやした・・・・」

というわけで、フランクはボンゴにコンガ用のヘッドを張ってたのでした。
 そういえばフランクってマッチョだもんな、ステージ衣装ぴちぴちのノースリーブって感じだもんな、文句あるやつはどっからでもかかってきなって感じの鋭い目だし、コンガ用のヘッドだって人差し指一本でパッキンパッキン言うんだろうな・・・・とまあ、なんとも感心したんであります。

 というわけで、それからフランクともずいぶん仲良くなり、私の教則本にまで登場していただくまでになったんですが、そういえばこのとき

「教則本もいいけど、ビデオもやりたいなあ、今度は一緒にビデオを作ろう」

なんてことも言ってたんですよね。彼はブラジル物の楽器が大変上手で(アメリカの一流プロに向かって失礼か・・・・いや、まただ、がんばれ日本男児!!)いつか一緒に映像ものをやりたいと今でも思ってますんですよ。
今月のお言葉
「ちょっと手伝って」
“Would you help me?”

解釈・・・「偉人さんはさりげなく、また意外なところでその実力を自慢する」
(ごめんフランク、悪意はないのよ・・・)

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