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(テキスト:石川 武)

今月の偉人さん  ジョバンニ・イダルゴ

Giovanni Hidalgo
(ジョバンニ・イダルゴ)

 ティト・プエンテやヒルトン・ルイスらと共に、NYラテン ・シーンを牽引するベテラン・コンガ奏者。ディジー・ガレスピーやフレディ・ハバードなどジャズ・ミュージシャンとの共演も多い。数多くの作品に参加しており、ソロアルバムも数枚発表している。

ジョバンニの熱いプレイはコレで聴く。
Hands of Rhythm
Giovanni/MichelCamilo
World Wide
Giovanni Hidalgo

練習時間
 今回紹介するジョバンニは、今や世界一手が早く動くのではないかと目されているコンガの鉄人。チャンギート(キューバ、ロス・バン・バンのドラマー)と共演の教則ビデオなどでもおなじみなコンゲーロです。
 近年のスティーブ・ガッドとの共演もすばらしかったですね。彼のスーパー・プレイは、ラテンのサボールを重視するプレイヤーからは賛否両論な部分もあるのですが(叩け過ぎてしまう)、人間的にはとても暖かく、チャーミングな人ですよ。

 それではインタビューの状況をちょっと、お話しましょう。

 ドラムマガジンのインタビューで彼にあったのはかれこれ4,5年前。
 私は1991年、PASICで彼のコンガ、ボンゴ・ソロを聞いて以来の彼のファンでした。とにかく手が早く正確なのです。かといって、私にとっては決して機械的ではなく、ラテンの雰囲 気をとても上手にスーパー・プレイに結びつけている感じがしたものです。
 とにかくインタビューが行われるホテルのロビーで約束の時間を待っていました。

 その時間になり、招聘もとのブルーノートの担当者が部屋に電話しました。うかばぬ顔で戻ってきた担当者は一言

「部屋にいないみたい・・・」

私が「ロビーに向かってるのかも・・・ここで少し待ちましょう」というか言わないかの内に、私たちが座っているソファーの横を、ベーシストのアンディ・ゴンザレス氏が通りかかりました。担当者が「ジョバンニ知らない?」と聞くと

「ああ、さっき〜の部屋でビールのんでたぜ。何かあるの?」
「インタビューなんだけどつかまらなくて・・・」
「ふーん」

と笑うと、ゴンザレス氏も行ってしまいました。

「・・・なんてラテンな雰囲気なんだ・・・」

などと考えているうちに、担当者はそのビール部屋へ電話をしています。
 戻ってくると「15分後に部屋にきてくれって」ということなので、少々ロビーで時間をつぶしてジョバンニの部屋へと向かったのです。
 ドアをノックすると「・・・・・・」返事がありません。2,3度繰り返しノックしていると、中でドアの開け閉めの音が聞こえました。「ガチャ」とドアが開くと、なんとそこには腰にタオルを巻いたジョバンニがびしょびしょで立っています。

「あれーっ、もう来たの、ちょっと待ってパンツはくから」

というと2,3分してつるつるのジョバンニが出てきました。

「・・・またもや、何てラテンなんだ・・・・時間という感覚はないんだろうか・・・まあいいか・・・」

と、こちらもかなりラテンな気分になったところでインタビュー開始。色々と聞いたあとに

「ジョバンニは何であんなに早く手が動くの?」

と聞くと

「練習したからね」

と一言。
「どのくらい練習したの?」と聞くと「そうだなあ、子供の頃は一日8〜9時間ぐらいはコンガ叩いてたなあ。」だって。
「すごいねー、一日中練習だね。今でもそんなに練習してるの?」
と聞くと


「今はツアーツアーで時間がないからね、ほとんどできないよ。まあホテルに戻って一日3〜4時間が限度だね」
「・・・・・・・・・」


というわけで、世界中を飛び回る間にも一日3〜4時間の練習は欠かさないそうです。
 それであのスーパー・プレイ・・・・納得です。

 ちなみにいいことを教えてもらいました。一般的に、パーカッションやドラムの教則本やビデオではリラックスという言葉がキーワードになっていますが、ジョバンニが速いプレイをするときには、両腕から胸にかけて鉄の輪が入っていると思って目いっぱい力を入れて、肺いっぱい空気を吸い込んで、息を止めた瞬間にスーパー・プレイをするそうです。
 驚異的なプレイがしたい方、一度試してみてはいかが?
今月の一言
「今は時間がないから・・・」
“Idon’t have much time・・・ ”

解釈・・・僕たちは時間を無駄にしすぎてる、かも?

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