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ふじかわまゆみの「ラテンの世界へよ〜こそ〜」'01/5月
 
 あたしは結構「損」をする事が多い。店頭に洋服がバババーンと置いてあったりすると、
「お、こりゃぁ安いんじゃないのか。もしかしたら今買わなきゃ損なんじゃないのか。こりゃぁ、いかん。すぐに買わねば、買わねば。」
 思い立ったら吉日と早速購入するのだが、ちっとも吉日にはならず、もっと良い物が安く他の店にあるのを発見してしまい、がっくりすることがたびたびあるのだ。そんな「損」をするのは大嫌いだが音楽の「ソン」は大好きである。
 今回はソンのお話し。
 
キューバの音楽 ー ソン 編
 

 白人音楽と黒人音楽が見事な結合をみせた、もっともキューバ的な音楽。
 一般的には、前半部分がメロディックな歌曲形式で、後半部分がモントゥーノと呼ばれるソロ歌手とコーラスの掛け合いになる形をとっているのがソンである。
 この掛け合い部分を強調したモノをソン・モントゥーノと呼ぶこともあれば、モントゥーノ部分がないものもある。広い意味でキューバ人が「これはソンだ。」と感じるようなリズムやフレージングを持つ曲がソンということになるだろう。

  19世紀、キューバのオリエンテ地方で生まれ、スペイン語で音という意味。
 ソンの起源はいろいろ分かれているが、1550年頃、サンティアゴを中心に唄われていた「マ・テオドーラ」が最初である、という意見が有力らしい。
  1868年の戦争で、兵士達がギターやマラカスなどの楽器を持ってハバナに入り、ポピュラー音楽として発展していった。構成は、ギアとモントゥーノの2つの部分で出来ていて、ギアはスペイン的歌曲のメロディアスな部分、モントゥーノはアフリカ的要素のコール・アンド・リスポンスである。
 アメリカやヨーロッパで演奏活動をして、このソンを世界へ広めたのは、ギターのミゲール・マタモロス、ギター・ヴォーカルのラファエル・クエト、マラカスのシロ・ロドリゲスの3人組、トリオ・マタモロスだろう。
 1925年、ソン・トリオにボンゴを加えたバンドが出てきてから、その後もグレードアップが続き、ギター、トレス、マリンブラ、ボンゴ、そして、シンガー2人が演奏するクラベスとマラカスの6人組、セステートが確立され、1930年のソンの全盛期には、そこにトランペットが加わり、7人編成のセプテートとなった。
 「コンフント」と呼ばれた大人数のグループは、ホーンセクション、ギター、ベース、シンガー、ピアノ、ボンゴにコンガと、現在のラテンバンドに近い形で演奏していたようである。

  世界的にヒットとなったソンの曲「テル・マルセーロ」(南京豆売り)。
 しかし、「ソン」という言葉が英語の「song」と混同されるからという理由で、この曲の形式名が「ルンバ」と記されて、世に出てしまった。それ以降、ソンはルンバという名前で知られ、社交ダンスにも組み入れられてしまったのだった。
 人気のあったソンもキューバ革命以降は低迷の時期を迎えるが、70年代に入り、アダルベルト・アルバレスやシエラ・マエストラによって、現代的な感覚で革新された。
 その後もソンは発展し続け、常にキューバ音楽に寄与し、他のジャンルの音楽にも影響を与えている。

最も愛されているであろうソンの作曲者イグナシオ・ピニェイロは、こう言い残したらしい。


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