「ボカ〜ン!」はリズケンがお贈りするエンターテイメント・マガジンです。
リズケン・スタッフや外部ライターの方による傑作をお楽しみください!
リズケンサイト・トップページへ
    

(テキスト:石川 武)

今月の偉人さん  ラルフ・マクドナルド


Ralph MacDonald
(ラルフ・マクドナルド)

 

 1944年3月15日ニューヨーク州ハーレム生まれ。カリビアン・バンドを率いる父親からスティール・ドラムを学び、共に活動した。17歳の時にカリプソ音楽をヒットさせたハリー・ベラフォンテのバンドに参加。コンガなどのパーカッションのほか作曲も手掛ける。その後、スタジオ・ミュージシャンとしても活動をし、'70年に加入したロバータEフラックのバンドでコンポーザーとしても活躍。'76年に初リーダー作『サウンド・オブ・ア・ドラム』を制作し、その前後自らのグループ“ライターズ”を結成。さらに、『ワインライト』にプレイング・プロデューサーとして参加し、提供したオリジナル曲〈ジャスト・ザ・トゥ・オブ・アス〉で、グラミーの「最優秀リズム&ブルース・ソング賞」を受賞し、アルバムは主要部門の「レコード・オブ・ジ・イヤー」にもノミネートされた。以来、パーカッション、プロデュース、作曲など各方面で活躍。

ラルフのパーカッションプレイはコレを聴く。
Weekend In L.A.
George Benson
「Wine Light」
Grover Washington Jr.

「A-ha I see!」
 ついに来てしまった、私の心の師匠の内の一人ラルフ様です。私がパーカッションを始めた要因にもなっている人です。ううう・・・ラルフ様、書かせていただきます。まあ、こういうことなので今回はおふざけなし。心して書かせていただきます。

 ラルフさんに会うことができたのは、かれこれ10年以上前なのかなあ。まだかのリチャード・ティー氏も健在だった頃ですから。感動したなあ、あの時は。ラルフには本当に色々なことを教わりました。(もちろん直接ではありません)


教わったこと その(1)

 かれこれ23、4年前、まだ私がパーカッションを始めたばかりの頃、巷でパーカッション色の濃い音楽といえばラテンかサンバか、という時代でした。当時渡辺貞夫さんのツアー・メンバーでよく演奏を見るようになってはいたのですが、最初は

「ずいぶんポップな演奏するんだなあ」

などと、とてつもないことを考えていました。

「コンガでトゥンバオもやらないし、オリジナリティのある人だなあ」

なんてな風にも考えていちゃいました。
 ところがその当時彼が演奏していたパターンは、カリプソという伝統ある音楽のアイテムだったんです。当時からニューヨークあたりではファーストコールだったラルフですから、気をつけて聞いてみるとあちこちのレコードにこのパターンが使われています。それも名盤といわれるものに。これをきにカリプソという音楽を勉強し始めたのでした。


教わったこと その(2)

 あるコンサートを見たとき。知るひとぞ知るピコピコハンマーのソロをはじめて見たときでした。もちろんピコピコハンマーも印象的だったんですが(もちろん音楽的だったからです)ポッド・シェケレという楽器(小ぶりのシェケレです)ひとつで延々一曲をとおす演奏があったんです。

 しかしその音の選択の的確さや、シンプルなパターンの必然性など、どれをとっても完璧。とくに静かな場面で2小節に一回ぐらい「チッ」とシェケレを振り下ろす、このタイミングの正確さや、音の存在感は絶品でした。
 このときのセッティングはコンガ2本と小物が2,3点という実にシンプルなもの。ただその音の世界はまさに完璧。ひとつの音の大切さを教わったのもラルフでした。

 その他はまたの機会にまわすとして、インタビュー時の話をひとつ。

 このときの共演者は、ベースがウィル・リー、ドラムがバディ・ウィリアムス、ピアノにリチャード・ティーなど、そうそうたるメンバー。会場に着くといきなりヤマハのスタッフに見つかり

「石川君、大変だよ」
「な、なんですかいきなり」
「いやね、今日はドラムマガジンの取材があるよってラルフにいったらさあ、横で聞いてたバディが、なんで俺の所にこないって、かんかんよ」
「ええっ、そんな事いわれても僕がブッキングしたわけじゃないし」

などと言っているうちにラルフ登場。
 自己紹介をして名刺を渡していると、そこに怪訝そうなバディがいらっしゃいました。すごい顔で僕の名刺を覗き込むと

「何だ、そうか」

と一言。そうです、私の名刺にはコンガの絵が書いてあったんです。

「ふーー、」

 胸をなでおろした私は、命拾いをしたわけです。というわけでインタビューが始まったんですが、その内容はまた次回。
 お楽しみに!!
今月の一言
〔ラルフのお言葉ではありませんが〕
「A-ha!I see.」

解釈・・・「なんでい、パーカッション屋さんかい!」
変なことで命拾いすることもあるもんだ。

Presented by RIZKEN / since 2001.03 / All rights reserved by KENMUSIC