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2004/10月号

(テキスト:石川 武)

TATA GUINES

TIPICA 73 =EN CUBA=
        「FIESTA DE TAMBORES」



「EN CUBA」
TIPICA '73


 タタといえばコンガ叩きの中ではいわば神格化されつつある人。ご存知の方も多いでしょう。
 このTIPICA73もバイブル的レコードという事になります。FANIAアーティストの集合体であるTIPICAにタタはキューバのゲストアーティストとして招かれたわけですが、この演奏がすごかった。

 アルバム4曲目の「FIESTA DE TAMBORES」長いコンガ・ソロで始まるこの曲は、コンゲーロとしては必聴アイテムと化しました。

 もちろんプレイの音楽性もあるのですが、なんといってもコンガの音がいい。これぞコンガという感じの音です。僕にとっては、以前紹介したドン・アライアスのサウンドも「これぞコンガ」なんですが、こちらは伝統をもひっさげた「これぞコンガ」です。

 日本のあるコンガプレイヤーから以前こんな話を聞きました。
 タタとは知りあいだったらしいのですが、タタが何かのコンサートで来日した折、ちょうど自分のライブも重なってあったそうです。
 自分のライブの途中で、コンサートが終了したタタを「遊びに来ない?」的に自分の会場に招待したそうです。
 会場に到着したタタに一曲お願いしたところ、快く引き受けたタタは、舞台に乗っていたその日本人プレイヤーのコンガを、躊躇なく叩き始めたそうです。

 ところが、なんのチューニングもせず、いきなり叩いたはずのコンガが、既にあのEN CUBAで聞いたソロとまったく同じサウンドに聞こえるそうです。

 楽器じゃないんですねえ。僕も良く生徒に言うんですが、一人一人まったく違う形の手(マレットと考えてもよい)で叩くんだから、そりゃ違う音さ、と。
 しかしあの伝統あるコンガのサウンドを、なんの気なしに叩いて、実現させてしまう。こんなすごい事はありません。一度やってみてください。コンガという楽器、そう簡単にコントロールできる楽器ではないんです。

 まあ、これに関しては是非自分の耳で確認してください。
 とにかく、コンガのサウンドというものに目を向けさせられた、僕にとっても貴重な一枚です。是非大型輸入CD店で、是非探し出して欲しい。なんか大事なコンガ演奏の幹にいつまでも君臨するアルバムでありましょう。


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