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2004/10月号

(テキスト:呉 成徹)

<新企画>

 リズケン講師陣の中では、実は若手の部類に入る呉成徹氏による「それいけ!ドラム談義」です!普段から呉先生の会話センスは、そのオットリとした風貌からは想像もつかないほどに、時として鋭く、聴く者を遙か彼方に誘ってくれます(^^;)。さぁ、アナタも呉先生ワールドに飛び込んでみてください!

 今回取り上げる楽器は前回のコンガ同様、キューバ楽器の3種の神器の1つであります、ティンバレスです。
 以前からこのティンバレスに1つの疑問がありました。
 ドラムセットやコンガ、ボンゴ等は、音程が左から右に低くなる(右利きの場合)のに対して、ティンバレスは左から右にかけて音程が高くなるのはどうしてなんだろう?と思っていました。その疑問が解決するかはどうか判りませんが、ティンバレスについて探ってみようと思います。


研究生 坂本健志さん
 ティンバレスは2つのシングルヘッドの太鼓、右の高い音程をmacho(マチョ)左の低い方をhembra(エンブラ)それとカウベル、大きい方をマンボベル、小さい方をチャチャベルそれとウッドブロック(写真はプラスチックで出来たジャムブロック)からなる楽器です。

 このティンバレスはキューバでは様々な呼び名が付いていて、Pailitas Cubanas (パイリタス・クバナス) Pailas Cubanas (パイラス・クバナス) Timbaletas (ティンバレタス) Panderetas (パンデレタス)などです。
 現在、一般的に呼ばれているのは、TimbalesやPailitas Cubanasの2つです。

 ティンバレスのルーツについては征服者のスペイン人が当時のヨーロッパ音楽(クラシック)で使われていたティンパニをキューバに持ち込んだ事とされています。
 そのキューバンスタイルのティンパニが最初に演奏したとされているのは、18世紀に設立された、サーカス団でオルガングループに取り入れらたとされ、そこから様々な楽団にもティンパニが導入されたとされています。

 現在のティンバレスの形になるのは20世紀になってからとされ、それまで上流階級の人達の音楽だったコントラダンサ(カントリーダンス)が一般のより低い階級の人たちにも演奏される様になり、高価なティンパニに代わりフライパンにヤギの皮を張ってロープと釘などで作られたチューニングが可能なタイプの楽器がストリートミュージシャンの間で使われるようになりました。

 現在パイラと呼ばれている胴の部分を叩く事は、フライパン(ラテン語でPatella、フランス語でPaeleと呼ぶ)の事を指した名残りのようです。

 そのストリートミュージシャン達が演奏していた音楽、ダンソンやチャランガなどが進化して、チャチャチャやマンボになり、現在使われているカウベルやウッド・ブロックなどが導入されるようになりました。

 80年代以降になるとソンゴやティンバといった新しいリズムが演奏されるようになると、ドラムセットを取り入れたドラティン(ドラムセット+ティンバレス)なども登場し進化を続けている楽器であり、これからもどの様に進化していくか楽しみのある楽器の1つであります。

 ここで最初に取り上げた疑問、音程の事ですが、ティンパニのならび方を見ると左から右に音程が上がっていく楽器であることに気が付きました。私の見解ですが、ティンパニの影響が強く残っているのではないでしょうか?
 疑問を残しつつもここでお別れです。
 また来月お楽しみに〜 (おーい逃げるな〜)


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